俺がこの男たちに出会ったことを、吉とするか凶とするか…。
それは、神様でも知り得ないことなのである。











A high school detective






清々しい朝。
スズメたちのチュンチュンという囀り。
そよ風が気持ちいい。 透き通るような青い空、とてもいい朝だ。





森戸七郎(もりと しちろう)はゆっくりと背伸びをした。
まだしわも汚れもない、彩里(さいり)高校の制服。
胸がスカッとする。


これから、どんなことがあるのだろう。
 
七郎は、この春彩里高校の1年生になるのだ。
不安はある。だけど、期待がその何倍にも膨れ上がっていた。
 
×××








「野球部入ろう!」
「一緒にサッカーで頑張ろう!」
「陸上はいいよ!」
 
様々な部活動勧誘の声。
スポーツは好きなほうだ。
中学時代はバスケをしていた。
だが、高校ではもっといろいろ経験してみたい。
文化部にも興味がある。
 
七郎は、グルグル辺りを見回っていた。
サッカー部は、新入部員が多そうだ。
野球部のマネの結美先輩は、めちゃくちゃ可愛かった。
どうしよう、と七郎は目を輝かせながら校内を歩いた。
校内も、たくさんの部活をしている。
 
どうせ入るなら、やはり一番は楽しい部活がいい。
迷ってはいたが、七郎は楽しそうだった。










「おおおお!新入部員か!」
いきなり、大声がした。
 
 
「は?」
七郎が振り向くと、茶髪で、長身の爽やか系美少年が、にこやかに手をブンブン振っていた。
「えっ、」
七郎がそう漏らすと、ガッシと腕を掴まれた。
 
 
 
「なななななななにするんですか!」
「何、お前50音の中で『な』が一番好き? 俺は『ゆ』だな〜、あの形といい、発音といい…」
「んなわけねーだろ!50音の中で何が一番好きとか聞いたことねーよ!」
「でもな、最近俺『さ』にもハマってんだー」
「ハマるとかないから!」
 
と、変なやり取りをしている内に、ずるずると七郎を引きずっているこの少年。
「ちょ…!どこ行くんですか!」
「え、3棟の3階の会議室。」
「ここ1棟の1階!一番離れてるじゃん!よくそれでアンタの部の新入部員だと思えたな!
 ってかアンタそこまで俺を引きずる気か!」
「いや、俺が引きずるのはあの忘れられない過去の記憶だ。」
「何センチメンタルになってんの!捨てろよんな記憶!」
「誰がセンチメートルだ!確かに俺は175センチあるけれど、 メートルで言えば1.75メートルじゃねーか!」
「センチメンタルだ!メートルもセンチメートルも全然関係ないから!」
 
…という会話(漫才?)を繰り広げていると、もう3棟の3階に着いていた。
 
「早っ!」
「そりゃそーだろ、作者のネタがつまってしまう。」
「言うなよんなこと!ただでさえあいつスランプ中なのに!」
うるせぇよ、もーすぐテストもあるし他に小説も書かなくちゃいけねーんだよ。
スケジュール詰まってんだよこっちは。
 
「…で、アンタ何部なんですか。」
あー無視かい、そーですか、そーきましたか。あーわかったよ、そーですかよくわかった。
「キャラにイチャモンをつける作者がどこにいるんだ。」
「え、何を言ってんだお前?なんか聞こえたか? あ、たぶんそれ、心が汚れている者にしか聞こえないんだ。なるほど。」
「どーいうことだこら。」
七郎は眉をぴくぴくと動かした。
それを無視して少年は、会議室に入った。
 
「…ってか、この部何部なんスか。」
つられて入ると…
 
 
「ようこそ!探偵部へ!!」
 
と、少年が極上のスマイルを向けて言った。
 
「たっ…たんてーぶ?」
七郎は目をぱちくりとさせた。
「探偵部なんて…!」
バッグに入っていた、彩里高校の資料を捲る。
部活動紹介の欄を読んでも、その部の名前はない。
 
「探偵の『た』の字もないじゃん!」
「いや、卓球部の『た』の字ならある!」
「そーいうことを言ってんじゃないよ!」
 
はぁ、とため息をつく七郎。
「勝手に作ったんですか?」
「勝手じゃないよ! ちゃんと顧問の先生もいるんだから!」
「先生…?」
「先生!」
 
少年は、会議室の隅っこの方にある何かを取り出した。
 
 
それは、金属製のゲージだった。
 
 
「…何スかこれ。」
「ハムスターの山田。」
「ハムスターかよ!」
「先生じゃ!」
「ハムスターって言ったじゃん!」
「ほら、ハムスターと先生って似てるじゃん!」
「似てないよ!生きてることぐらいだよ、似てるといったら!」
「山田先生になんてこと言うんだ。」
「しかも苗字が名前かよ! せめて名前にしてやれよ!」
「なぁ、山田先生、許可してくれてるよな?」
…その山田…もといハムスターは爆睡している。夜行性なのだ、ハムスターは。
 
「何も言わねーじゃねーか!」
「バカ野郎、ハムスターの爆睡は人間で言うyesなんだよ!」
「『人間で言う』って言ったね!今!」
 
ギャーギャーと言い争いをしていると、キィィ…とドアが開いた。
 
「あ、智〜vv この新入部員ひでぇんだよ! 山田先生のことハムスターの目で見るんだぜ!」
「あんたも見てるじゃん! そもそもこのハムスターに教わりたくないよ! え、というか…」
 
七郎は、ドアが開いた方向を見た。
 
 
そこには、背丈は低めで、黒髪で、大きな目が特徴的だが、 どこか冷たそうな、クール系の少年が立っていた。
「翔!新入部員なのか!?」
その大きな目が、キラキラと輝いた。
「え、ちょっちょ、待って!俺、入るなんて一言も…!」
すると茶髪の少年は、
「言ったじゃん!入るって!」
と指差した。
「そりゃ今はな!」
七郎も負けずに反論。
 
「新入部員!うわー、入ってくれてありがとな!」
…黒髪の少年は、どうもそのやり取りを聞いてなかったらしい。
七郎の手を握って、限りなく澄んで輝いた目で、とても嬉しそうに言った。
 
「あ、いや…はいる気…ないんスけど…」
七郎は、控えめな小声で呟く。

「よろしくな!4人で頑張ろうぜ。」
あどけない笑顔に、七郎は何も言うことが出来なかった。









◆◇◆












「俺は部長で2−Bの日和翔(ひより しょう)!よろしくな! 部長だからどーんと頼ってくれ。」
茶髪の爽やか系の少年は、自分の胸をドンと叩いて言った。
 
未だに、こんなアホが先輩だということが信じられない七郎。
だからツッコミなんかはタメ語なんだろう。
 
ましてやこの男が部長とは。
世も末だ(言いすぎ
 
「今までのやりとりで俺がアンタを頼れると思うその豪快さだけは敬服したいと思うよう、努力します。」
「酷っ!お前極悪非道・文武両道だな!」
「文武両道ってなんなの!最後に『道』があれば何でもいいと思うなよ!」
「ええっ、横断歩道もダメ!?」
「尚更ダメだ!」
 
もうこんなアホなやりとりは早送りで、あの黒髪の少年が、自己紹介をする。
「俺は翔の助手の、2−B雪峰智春(ゆきみね ともはる)。よろしく。」
 
口調は静かで、翔とは逆に、クールで落ち着いた感じの少年だった。
 
 
「智は天然なんだぜ。」
と、翔がボソっと言って笑った。
「え…?この人が!?」
 
そのクールな印象から、『天然』というワードがちっとも繋がらない。
まさか翔は、天然という意味を間違えているのか。
 
 
七郎が思考回路を巡らせていると、 智がゲージを開けて、山田…ハムスターを抱き上げた。
細く白い指でちょんとハムスターをつつきながら、こう言った。
 
 
「この人が『山田 颯雅 洋臣(やまだ そうが ひろおみ)』先生。」
 
 


ゴンッ、と七郎は思いっきり頭を打った。
 
「こ、この人…!」
 
ハムスターを顧問と言うのか…!?
しかも山田というごく平凡な苗字の後ろにすげぇかっこいい名前があるし!
BLEACHみたいじゃん…!苗字ちょっと似てるし…。
俺に1つくれよ!
 
「この人は一見ハムスターに見えるけどな、わけあってこの姿で生活してるんだ。」
と、智が言った。
その目は、限りなく澄んでいて。
…とても、嘘を吐いているとは思えない。
 
「アンタこんな人に何吹き込んでんだ。」
「あははははははっ、智ってクールなのに天然バカだからおもろいんだよなー。」
「天然バカって、どういうこと?翔。」
「いや、この人が天然なのは認めるけど、バカはアンタだろ。」
「酷っ!お前酷いな! 平凡な何処にでも居そうな顔してんのに。」
「ほっといてくれ!」
七郎は思いっきり叫んだ。
 
「…で、アンタの名前は?」
「待てよ、俺まだ一言も入るなんて言ってねぇぞ。」
七郎がそう言うと、智が
「え、何か不満でもあるのか? ハムスターの姿をしている山田先生が不信だとか? 翔や俺が嫌いになったとか?」
と、不安げに見つめてきた。
…これが天然だというのだから、七郎には辛いものがある。
こんな人を傷つけてはいけない…。
そう、瞳を見て酷くそう思う。
 
「お…俺は、1−F森戸七郎です…」
そう言ってぺこりと頭を下げると、翔が腕を組んでいった。
「なんか微妙な名前だな、七郎って。 メジャーなんかマイナーなんかわかんねーよ七郎って。」
「てめー全国の七郎さんに謝れ。」
 
…アホ(翔)に代わって謝ります。
ごめんなさい七郎さん。
 
智が笑いながら言った。
「そうか、一郎かー。」
「七郎です。」
「あ、ごめんっ。ごめんな、ほんと!」
シュン…とした目で謝る智。
 
「あ、いい、いいんです、いいんですよ! よよく、間違えられますから!」
慌てて手をブンブン振る七郎。
そして、この名前をつけた(7番目の兄弟でもないのに)両親と作者を心から恨んだ。
 
すると、智に笑顔が戻った。
「お前、いいやつだな。八郎。」
『1つ増えてる!』 と心の中で叫ぶ七郎だった。










●○●











「で、探偵部ってなんですか。」
「名詞。」
「品詞名じゃねぇよ!」
「あとはわかんねぇけどな。はっはっはっは。」
「自慢するな。」
「いや、形容同士みたいなのがあったか。」
「漢字違うって!…ってんなことじゃなくて!」
 
七郎はバンッと机を叩いた。
 
すると智が、
「クイズ番組好きなのか?」
と、無邪気な目で聞いてきた。
…いい意味なのだろうか、クールな外見がぶち壊しである。
 
 
「智先輩黙ってて下さいね。 何か閃いても必要なことじゃないと思ったらお口にチャックですよ。」
「はーい。」
すぐに智の扱い方をマスターしてしまった七郎は、自分に疑問を抱きながらも、
 
「そもそもここは何をするんですか?」
と聞いた。
 
 
「あー、高校中の依頼を受け付けるんだ。探偵業。」
けろりと言ってのける翔。
「えっ、あんたら2人が!?」
驚く七郎。
「どーいうことだ、二十八郎!」
「アンタは絶対わざとだろ!」
バシッと翔の頭を叩く七郎。
 
「翔、人の名前を間違えるなんて失礼だろ。 な、六郎。」
 
…アンタもだよ。
とは決して口に出来ない七郎だった。
 
というか、まぁお口のチャックを開いたのは、彼なりにこれは必要なことだったんだろうなぁ。
…最後の一文はチャックして欲しかった。
 
 
…っていうか、こんなやりとりがあるから前に進まないことに気づいた作者。
 
 
「本当にやってるのか?解決してんのか?」
「あぁ、今まで246の依頼を受けて、305成功した!」
「…オーバーしてるぞ、やっぱあんたアホだろ。」
「えーっと246…305…あ、本当だ。」
 
 
 
で、本当はというと。
 
 
 
「今まで1年間で36の依頼がきて、解決が32。
 あとの4件は、俺らが手を加えなくてもよかったりとか、 まぁ難事件というか、そーいうのね。」
「9分の8の解決率だぜ。」
と笑う智。
「えっ、36と32で58じゃね?」
「何がだよ!依頼と解決合わせてどうすんだよ! ってか計算違うし!」
「えーっとさんじゅーろくたすさんじゅーにーは… ろくたすにーが、はちー。 さんたすさんが〜… あ、68か!」
「小学生以下かアンタは。 ていうかそれは合ったけど、足しても確率にはならないからな。」
 
はぁ…と、ため息をつく七郎。
 
「…ていうか、そんなあんたらが事件解決できんの?」
「できるよー!」
「翔は事件に関しては凄く天才だぜ。」
「智は天然だけど頭いいしさー。」
 
 
 
 
…本当なのか。
 
 
 
 
「俺が探偵で、智が助手で… あ、お前は雑用だな。」
「雑用っ!?やだよ、いやだよ雑用なんか! そもそも俺入るって決めてないからな!?」
「仕事はー…書類整理とか、…聞き込みとか、…宣伝とか、山本先生のエサやりとか…」
「エサって言ったよね!?」
 
 
なんなんだこの部は。
 
 
「…はぁ。」
 
本当に、この人達は解決ができるのか。
 
考えるだけで、ばかばかしい。
 
 
 
 
 
「ちょっと、失礼しま…「ちょっと、探偵部ですか!?」
 
七郎が出ようとしたとき、 2人の生徒が入ってきた。
 
「あー、どうもちわーっす。探偵部ですー。」
翔がドスンと会議室のでかいイスに座った。
 
 
 
 
「ご用件は、なんでしょうか。」
 
 
 
 
その時、翔の顔つきが、変わった。
 
 
 
 
 
…気がした。
 
 
 
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つ、続くのかよ!
 
あ、どうもすみません。 この小説のアホ作者深空です。
このたび氷菜様のサイト開設記念に小説・絵を贈らせていただくことになりました。
リクはとりあえずギャグで…。だそうです。…た、楽しいですか!?
長くなったので次回はすぐまた送りますー。
待ってて下さい。
 
えーっと絵はこの物語をテーマに描きますよー、氷菜さんー。
それでは、コメントもアホな深空でした。
 
 
 
 
 
 
 
いやいやいやいや。本当にありがとうございましたぁ!!!
大爆笑もんですよ!素晴らしすぎる!!!
阿形のような文才もない画才もない者にはまぶしすぎますよ!!
ぺかぁーって!(何)
絵もとても素敵でした〜。
深空様、お忙しいなか、本当にご無理を言いまして…。
深空様のスケジュールを狂わせたのはこの私です…。無視しないであげて。七郎。(呼び捨てんな)
本当にすみませんでした。それと、素敵な小説&絵を本当にありがとうございました!!